創作詩

次呂久 真司

一般公開

「トカゲと蝶」 次呂久真司

ぼくはトカゲで、君は蝶。

君がとびっきり美しい羽を広げるから、ぼくはもう君に夢中なんだ。

どうか、このまま。ぼくの近くにいておくれ。

もう君なしでは、ぼくの人生が狂いそうだ。

空が、草花が、木洩れ日が。こんなにも美しいだなんて!

君と出逢って、初めて気づいたんだ。

どうか、このまま。ぼくの心を満たしておくれ。

やがてぼくにも飢えが訪れる。馬鹿みたいだね。

君は美しい姿で、美しく花畑を飛んでいる。ぼくはもう君に夢中なんだ。

どうか、このまま。ぼくの飢えを満たしておくれ。

もう君なしでは、ぼくの人生が狂いそうだ。

波が、風が、葉音が。こんなにも自由な音楽を奏でていたなんて!

君と出逢って、初めて気づいたんだ。

どうか、このまま。ぼくの、ぼくの――。

君のいない人生なんて、つまらない絵画展のチケットを持っている気分さ。

どこを探しても、もう君はいないのかい?

君の声も、美しく広げた羽も、甘い香りも全て。もう見ることはできない。

君はどこか遠くへ飛んでいったのだろう?

ぼくはトカゲで、君は蝶。

交わることのない二人だったのさ。

世界がそれを許してはくれないんだ。

だれか、この砂上の楼閣のような世界を壊してくれ!

トカゲと蝶が愛し合えるようにさ。

だれでもいいから、返事をしてくれ!

ぼくも同じだ。この世界は、既に狂っているって!

どうか、このまま。このクレイジーな世界が崩壊しますように。

君が教えてくれた、「美しい完璧な世界」。その全てを、忘れさせてくれ!

だって、もう、君なしでは、ぼくは狂気になるだけだからさ。

次呂久 真司 ジロク シンジ

所属:芸術専攻 文芸領域

沖縄で小学校教員をしながら「つむぐ」というペンネームで執筆活動をしています。自著『星空の下で』は、沖縄・八重山に伝わる昔話を糸口に主人公たちが成長していく物語を書きました。ぜひ一読あれ!