個人ポートフォリオ PORTFOLIO

在学生、修了生、教員による研究活動や制作物の情報を公開しています。

山口 健 ヤマグチ タケシ

所属:芸術専攻 芸術学・文化遺産領域

1965年大阪府生まれ。
2025年3月に京都芸術大学大学院芸術研究科 芸術専攻(通信教育) 
芸術学・文化遺産領域 芸術学分野(芸術理論・西洋美術史ゼミ)を修了。
修士論文は「ヨシズミトシオ論 -その普遍的な美の可能性-」

ヨシズミトシオを中心に、「不可視なものを可視化」することに取り組む同時代の日本の芸術家の研究を行っています。

2024年12月8日報告

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修士論文の最終提出に向け取り組んでいる。図版に使う画像の美術館や作家からの使用許諾を済ませ、また論文本文および参考資料に記載するヨシズミとのインタビューの内容の開示範囲の確認もプライベートな内容が含まれるため細心の注意を払って行った。論文の全体的な内容は言うまでもないが、上記の点の他、注釈、参考文献一覧の記載、図版のキャプションなど「神は細部に宿る」という言葉を噛みしめながら対応している。

2024年12月22日報告

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修士論文の提出を終えました。4年前に芸術教養学科に三年次編入した時には大学院進学という選択肢は微塵もありませんでしたが、学部で小林先生の「美学概論」を履修し美学という分野に深い興味を覚え、またこの科目のレポート課題でヨシズミトシオを取り上げたことで自分が研究を深めたい分野が明確に認識できたことから大学院への進学を決意しました。このように私の人生における新たな挑戦に導いていただいた小林留美先生には本当に感謝しています。

2024年11月6日報告

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ヨシズミの個展を訪れ、氏と会話する機会をもった。今回の個展で初めて公開された、水墨にアクリル絵具で彩色した作品を鑑賞した。自然素材の墨とアクリル樹脂という化学品を固着剤に使ったアクリル絵具が違和感なく融合していたことが印象的であった。なお、水彩絵具を使うと墨色に水彩が滲みこんでしまい混濁してしまうことから、墨色と調和させることが難しいものの、混濁を避けられるアクリル絵具を使用したとのことであった。

2024年11月24日報告

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中間報告書Ⅳに関する先生方からのコメントを受け、論文の最終見直しと追加での参考資料の作成にとりかかっている。修士論文の最終提出日まで1か月を切ったが、時間が許す限り完成度を高めていきたい。参考資料として、2020年9月から続けているヨシズミとのメールのやりとりから一部抜粋した語録を作成しているが、下記の言葉にヨシズミの芸術に対する姿勢がよく表れていると思う。

2024年10月20日報告

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10月のゼミ発表を終えた後、先生方および同級生の方々からいただいた指摘やアドバイスを踏まえ、下記のような点について論文の加筆修正を行っている。

2024年10月07日報告

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中間報告書Ⅳの提出を終え、10月13日のゼミ発表の準備に取りかかっている。ゼミでは小林先生の他、君野先生、吉良先生のアドバイスを直接いただけるのを楽しみにしている。遅ればせながら君野先生の著書『捨身の仏教』を読み始めた。まだ第1章の途中であるが、本性譚が遊牧民族の文化・習慣を背景に成立した可能性に触れられており、法隆寺「玉虫厨子」の須弥座部に描かれた「捨身飼虎図」のような本生図が普及しなかったのは、遊牧民族の「血なまぐさい」文化が日本では違和感をもって受け止められたからではないかと書かれていた。このような文化的背景の差異を背景にした美意識の違いは本論文において重要な論点であり、本書を読み進めて論文の精緻化に役立てたい。

2024年9月22日報告

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中間報告書IVの推敲を引き続き行っている。まだ十分に納得のいく内容には至っておらず、特に結論部分にあたる第5章におけるヨシズミの「風韻譜」とその普遍性の可能性に関しては、その内容と構成についてさらに熟考を重ねたいと考えている。そのためにはヨシズミの作品に立ち戻る必要があると考えている。中間報告書IVの提出期限には間に合わないものの、下記の日程でヨシズミの個展開催が決まっており、修論の最終提出日までの期間における最後の個展となることから、しっかりと作品に向き合い修論完成に向け取り組んでいく考えである。

2024年9月10日報告

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芸術文化研究指導IVに参加し、そこで受けた質問などを踏まえ中間報告書IVの推敲を進めた。ここのところなかなか時間が作れず四苦八苦しているが、実質的な修論の原案としてより内容の充実したものにしていきたい。

2024年8月21日報告

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芸術文化研究指導IVの受講を控え、当日のレジュメおよび発表スライドの完成に目処をつけた。今回の受講で様々な意見をもらい、修論の充実を図りたい。

2024年8月9日報告

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芸術文化研究指導IVの受講を控え、修論の下書きに専念している。これまで書き溜めてきたものを合わせると4万字を相当超えてしまうことから、論文の章立てを見直しながら重要度に応じて削除しているが、なかなか難しくスタックしている。

2024年7月21日報告

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神林恒道 編『ドイツ表現主義の世界』に続いて、神林恒道 編『ドイツ・ロマン主義の世界』を読みながら、以前展覧会で観たフリードリヒの《夕陽の前に立つ女性》を思い出している。フリードリヒの作品は「気韻」という観点において共感するところがあり、ドイツ・ロマン主義やドイツ表現主義と「気韻生動」における「不可視なものを可視化」するという意思における共通性を再確認した。

2024年7月8日報告

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ゼミ発表を終え、修論の内容で充実すべき論点を検討した。カンディンスキーの芸術論が大正期の日本において東洋美術の美的概念と関連付けられ受容された点は報告した通りであるが、このような西洋美術の文脈において生まれてきたカンディンスキーを始めとする表現主義が、どのような歴史的文脈において生まれてきたのかを調べている。

2024年6月23日報告

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アーティゾン美術館で開催されている展示「ブランクーシ:本質を象る」を観に行ってきた。ブランクーシは、対象の真の意味を彫刻として表現しようと試みたが、その探求が進むにつれて、彼の作品はどんどん抽象的かつシンプルな形に変化していったのが印象的であった。ブランクーシと同様に、対象の本質を追求しようとしたカンディンスキーやヨシズミにも、同様の傾向が見られることは興味深い。

2024年6月9日報告

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前回報告の枠組みで中間報告書Ⅲを執筆している。カンディンスキーとヨシズミの作品は、抽象画という点を除いてはさほど似ているとは言えないが、その芸術理念や芸術理論については極めて共通する部分が多く見いだされる。特にカンディンスキーが「内的必然性」の成立根拠として挙げている、個性の要素、様式の要素、芸術性の要素の3つの関係性、すなわち個性の要素と様式の要素は時間が経つにつれてその重要性を失い、最終的に無意味になる可能性があるが、芸術性の要素は時間が経過するにつれて力を増し、永遠に存続するという考えは、普段ヨシズミが語っていることと極めて類似した内容となっている。

2024年5月19日報告

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中間報告書Ⅲの作成に取り組んだ。中間報告書では、1. 東洋美術と近代西洋美術の邂逅、2. 「気韻生動」と表現主義、3. ヨシズミにおける「気韻生動」とは、という3点を中心にまとめている。

2024年5月10日報告

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ヨシズミの作品の普遍性を検討する上で、大正時代の日本における東洋美術と西洋美術の邂逅という観点で調査を進めた。

2024年4月20日報告

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引き続き、ヘンリー・ブイのOn the Laws of Japanese Painting (1911)”における日本美術の規範についての分析をまとめた。前回はブイがあげた日本美術の3つの美的概念を説明したが、ブイはこれら3つの概念それぞれを西洋の美的概念と関連付け説明している。

2024年4月10日報告

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ヘンリー・ブイのOn the Laws of Japanese Painting (1911)”における日本美術の規範についての分析をまとめた。

2024年3月23日報告

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これまで東洋美術と西洋美術の結節点というテーマについていろいろと考えをめぐらせてきたが、最終的に、ポスト印象派以降の西洋美術と「気韻生動」を特徴とする東洋美術の類似点に関する批評をとりあげ、そこに見いだされる東洋美術と西洋美術との邂逅に焦点をあてることにした。現在、稲賀繁美の研究を踏まえて以下の点について調べている。

2024年3月9日報告

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カンディンスキー及びその周辺について調べている。「内的必然性」や、彼を非対象主義へと導いた「インプレッション」、「インプロヴィゼーション」、「コンポジション」という進化の諸段階といった概念は、東洋と西洋の結節点を考える上で非常に参考になると感じた。

2024年2月24日報告

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ワシリー・カンディンスキーの『抽象芸術論-芸術における精神的なもの』を読了し、現在はニーナ・カンディンスキーの『カンディンスキーと私』を読んでいる。以前からカンディンスキーの写真を見てアジア人的な面影があると感じていたが、ニーナ・カンディンスキーの本を通じてカンディンスキーの父方の祖母がモンゴルの王女であったことを知り、このことを納得した。

2024年2月10日報告

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これまで東洋美術と西洋美術の結節点として、ビザンティン美術とその背景にある新プラトン主義に着目し、仏教の華厳思想との思惟パラダイムの類似性に注目して考察を進めてきたが、これと異なる観点として19世紀後半以降の西洋美術における東洋思想からの影響について調べはじめた。特に20世紀初頭における動向に注目し、表現主義を出発点として抽象絵画を展開したパウル・クレーや鈴木先生から助言をもらったワシリー・カンディンスキーの著作の他、この時代の西洋美術における東洋思想の影響を作家ごとに考察したBASS(2005)などを参考にして考えをまとめていきたい。

2024年1月21日報告

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引き続き東洋における「気韻生動」論と西洋美術との接点について考えてきたが、そこでヨシズミは現在でも自画像を描き続けているのではないかという考えに至るようになった。ゼミで発表したようにヨシズミは初期の頃から膨大な数の自画像(そのほとんどは未発表)を描いており、銅版画においてもVisageシリーズに代表されるように自画像を描き続けてきた。しかしながら、2004年以降、ヨシズミの作品において「顔」は一切描かれなくなる。この理由として、ヨシズミが東洋思想の影響を受けるにつれ、より内面を深く掘り下げるようになり、自然からのインスピレーションや感動を画家が一種の濾過装置となり芸術作品として再現するようになったことにあるとしてきた。

2024年1月8日報告

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『中国医学の気』を読了。その他、気に関する先行研究として佐藤喜代治の『気』を読み始めた。もう少し先行研究をあたって理解を深める必要はあるが、中国の古代哲学において「気」は、宇宙を説明する概念としてだけではなく実体を持つものとしても考えられていたことが分かった。また、堀池は『説文解字』に「气、雲气なる。象形」とあるように、気は気体状ないしは流体状のものとして考えられており、人間の呼吸や自然界の風という経験がその背景にあったとしており、ヨシズミが現在テーマとして掲げている「風韻譜」における「風」は、「気韻生動」における「気」と共通するものとみなして問題ないと考えている。

2023年12月23日報告

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12月ゼミで鈴木先生からアドバイスをもらった、①「気韻生動」の「気」を、ヨシズミの作品において私自身がどのように指摘し解釈するのか、②ヨシズミという個の作家の作品がなぜ「普遍的なもの(としてわれわれが感じるもの)」を提示し得ているのかを作品内の問題として考えるのかという2点のうち、①に関して今後の研究の方向性を考えた。

2023年12月9日報告

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ゼミ発表に向けた準備を進めている。今回の発表には間に合わないが、西洋的な表現から東洋的な表現に変容をとげてきたヨシズミの作品が、たんに「東洋的」といったカテゴリーに閉じこもるものではなく、より開けた表現を指向しているという仮説を裏付ける検証が当研究の肝になると考えている。この観点から以前に触れたフロレンスキイや木下長宏の自画像の歴史に関する考察を参考に、イコンとヨシズミの銅版画の類似性を掘り下げはじめている。

2023年11月24日報告

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11月23日にヨシズミ氏のアトリエを訪問し、作品制作に関する議論、及び銅版画の刷りの工程を体験してきた。この刷りの工程では、まず銅版全体にインクを塗布した後、版上の余分なインクをふき取ってプレス機で刷り上げるのだが、ふき取りの工程だけで3,4時間かけるという手間のかけようであった。このような丹念な仕事によって、ヨシズミの銅版画の特徴である細かい線による表現(線と線の間の余白において一切汚れがなく明瞭なコントラストが際立っている)が生きてくることがわかった。銅版画制作では芸術的要素と職人的要素ともに高いレベルが求められるが、今回の体験で職人的技巧の重要性がよく理解できた。

2023年11月8日報告

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ヨシズミ・トシオの個展に行ってきた。今回は埼玉県立近代美術館で年2回開催されているものではなく、茨城県古河市にある「坂長(さかちょう)」の袖蔵での個展という趣向を凝らしたものであった。江戸時代より両替商後に酒問屋を営んだ坂長の敷地内には、店蔵(旧古河城文庫蔵)、袖蔵(旧古河城乾蔵)、文庫蔵、石蔵、中蔵、主屋があり、平成12年に国の登録有形文化財に指定された古河城遺構として歴史的な価値を有する建造物である。

2023年10月21日報告

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引き続きフロレンスキイ関するリサーチを行った。1882年にロシアに生まれたフロレンスキイは神学者、司祭、数学者、哲学者、歴史家と多彩な顔を持ち、宗教哲学関係を中心に、芸術論、言語論、シンボル論、記号論、数学、物理学と多岐にわたる分野で著作を残した20世紀ロシアを代表する思想家である。

2023年10月9日報告

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中間報告書の作成に着手した。M2に向け今後取り組む必要のある主要な論点は、①ヨシズミ作品における仏教思想の影響、②東洋的なものと西洋的なものの結節点(イコン正当化の理論的根拠となった新プラトン主義と仏教の華厳思想との類似性を手掛かりに)、③この結節点におけるヨシズミ作品の位置づけとその普遍的な造形美の可能性、④ヨシズミ作品が特に中欧において評価が高い背景と理由の4点と認識している。

2023年9月22日報告

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9月9日に報告したように、美術史における東洋的なものと西洋的なものの結節点を見いだすため、井筒俊彦が指摘する仏教の華厳思想における「事事無碍」という存在論と、新プラトン主義の創始者であるプロティノスの神秘主義的体験の類似性を手掛かりとした研究を進めた。具体的には、井筒の著作の他(1)、イコンに関する芸術論を語ったパーヴェル・フロレンスキイの著作(2)、及びパーヴェル・フロレンスキイに関する論文(3)などの閲読を行っている。まだ十分な読みこなしができておらず、引き続き研究を進めていく。

2023年9月9日報告

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ヨシズミの初期油彩画における自画像から、銅版画作品における「顔」の変容、そして水墨画に至るまでの流れに関して、木下長宏の先史時代から現代に至るまでの自画像の変遷についての研究(1)、永澤峻のイコンに関する研究(2)、貝澤哉のパーヴェル・フロレンスキイに関する研究(3)を新たに参照して整理を行った。

2023年8月23日報告

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ヨシズミ作品における「東洋の美学」というテーマに取り組み始めた。「東洋」と一言でいってしまうと、その地域、時代などの定義が曖昧となる可能性があるとのアドバイスから、これまでの研究を通じて、彼の作品に最も影響を与えたであろうと考えられる仏教(禅、華厳哲学)の世界観や美意識に絞って考察をすすめることとした。現代美術と仏教の関係を論じた先行研究は多くはないが、稲賀繁美『華厳経と現代美術-相互照射の試み』(2011)、佐々木宏子『現代美術と禅』(2010)などを参照して進めていく。

2023年8月8日報告

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ヨシズミの黎明期にあたる1970年代の日本の美術におけるひとつの潮流であった「もの派」との比較を通じて、この時代におけるヨシズミの立ち位置を探った。

2023年7月22日報告

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ゼミ発表を終え、小林先生、鈴木先生、ゼミ生の方々から頂いた様々な質問への回答を、今後の研究に活かすため整理した。全てではないが、頂いた質問に対する包括的な回答として以下の4点をまとめた。

2023年7月8日報告

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7月15日のゼミ発表に向けたパワーポイント資料とレジュメの作成に取り組んでいる。今回の発表では、

2023年6月21日報告

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芸術文化研究指導Ⅰに参加し、小林先生と鈴木先生の講義を受講するとともに、国立西洋美術館での企画展『憧憬の地ブルターニュ』と東京都美術館『マティス展』を見学した。「フォービスム」創出の契機となったマティスの《豪奢、静寂、逸楽》(1904年)と、この作品が描かれる直接のきっかけとなったシニャックによる比較的初期の作品である《ポルトリュー、クールヴロ》(1888年)をじっくり鑑賞することができ、20世紀初頭における「表現主義」の胎動を感じることができたことは大きな収穫だった。

2023年6月7日報告

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ヨシズミ・トシオの作品が、東洋の美意識や西洋の美意識といった対立的な関係を超越し、普遍的な美の表現という方向に変容しているという仮説を論理的に検証していきたいと考えている。しかしながら、5月21日報告に対する鈴木先生のコメントや関連する文献を読んで再考した結果、議論の組み立てにおいて「東洋の美意識と西洋の美意識の対立」という論点にまで射程を広げてしまうことで、論文における議論がぼやけ、本来の主張が希薄化すると判断した。

2023年5月21日報告

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中間報告書I提出に向け、研究方針の具体内容を下記のように若干修正した。

研究経過報告(2023年5月7日分)

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 第一回ゼミにおけるフィードバックを受けて、研究方針の計画の修正を行った。これまで日本と西洋の美意識の差異を考察し、その歴史的文脈において同時代の日本の芸術家であるヨシズミトシオの作品を位置づけ評価する考えであった。しかしながら、ゼミでのフィードバックを受けて、まず自分が最もよく知るヨシズミの作品を起点に研究を進めることとし、下記のような方針に変更した。