推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない(ガチで)

  • クリティカル・ライティングゼミ

笹尾 優子

一般公開

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推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない(ガチで)

「やばい!マジ無理!死ぬ、ガチでしんどい、つらい」……これは、私とオタク友達がアニメや漫画の

話しているときによく使う言葉である。だがこれは、何もつらいことが起きたわけではない。と聞いて、

どれくらいの人が驚き、逆に「ニヤ(´∀`)」と笑うだろうか? 一般的に、こうした言葉は、自分に何

か不幸が起きたときに出るものだ。だがオタク界隈では違う。主語がデカくて恐縮だが、オタクは「推し

の活躍に興奮すると語彙力が死ぬ」と言われている。あまりに嬉しくて、思わず物騒な言葉が飛び出すの

だ。本当は、そんな言葉じゃなくて、ちゃんと自分の”好き”を熱く、美しい日本語を巧み操り、優雅に語

りたい。そう思いながら、今日も私は推しの活躍に阿鼻叫喚(これは、幸せの雄叫びの意味)をしてい

る。

そんなときに出会ったのが『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』という一

冊。書店で見かけた瞬間、「やば!!これ絶対オタクの私のための教本じゃん……!」と震えた((((;゚

Д゚))))ガクガクブルブル

この本には、「言葉を書くこと」についてたくさんのヒントが詰まっていた。特に印象的だったのは、「語

彙を増やすこと」よりも、「言葉の細分化が大切」という指摘だ。【たとえば、好きなものを見たときに

「やばい!」と感じた理由──それは見た目?しぐさ?振る舞い?】そうした細かな要素を、ちゃんとメ

モしておくことの重要性が語られていた。さらに驚いたのが、SNS で“推し”について語るときのマナー講

座まで載っていたこと。「なんでここまで書いてくれるの!?オタクのための義務教育かな!?」と、爆

笑しながらも、熱意に感動してしまった。しかもこのマナーの話が、後半の「校正パート」で生きてくる

構成になっているのだ。展開の巧みさにハッとしたし、「大学院入学前の自分に必要なライティングの教

科書だった」と素直に思った。普段あまり本を読まない私でも、1 週間ほどで読み切れた。そして、きっ

と私はまたこの本を書けなくなったときに、何度もこの本を参考にしたい。

正直、後半の校正パートはオタクのためというよりもライター寄りの考え方なので、オタク人格で読んだ

私はそこまで響かなかった。でもライティングを学び「本気で自分の文章で人を動かしたい人」には、あ

の章こそが必要なのだと思う。まずはぜひ読んでほしい一冊だ。マジでヤバいから!

『「好き」を言語化する技術』、三宅香帆、株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン、2024 年)

笹尾 優子 ササオ ユウコ

所属:芸術専攻 文芸領域

日本画家です
2025年 文芸領域入学(クリティカル・ライティングゼミ3期生)