4.変な話1

  • 小説ゼミ1

登内 恵

一般公開

僕の机に置いてかれた両手の指が、

糸鋸で切られたように

綺麗にはずれた。

それの切れ目は血がでるというグロテスクなことはなくて、

ただつるりとした

千歳飴に似ている。

綺麗に切れた白い蝋にもみえた。

それは僕の前から距離をとるようにして部屋をでていった。

それからちょっと間をおいて指は僕のもとへ戻って来たんだけど、

なぜかその指先にはクッキーのカスが

粉砂糖が、かかったみたいに

うっすらと少しだけついていた。

指先をみつめていたら、そこには

蜥蜴にあるような小さな口があった。

口からは白い小さな歯がみえていた。

クッキーを食べたみたいだ。

僕のお腹はすいていて、指は、お腹いっぱいだなんてね。

・この作品のイメージ

もし、自分とは別の意思をもったものが、

 自分の体の一部だったら少し怖いかもしれない。

登内 恵 トノウチ メグミ

所属:芸術専攻 文芸領域

2025年 文芸領域 小説ゼミ1〈M1〉
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