7.文句を言うかわりに。
- 小説ゼミ1
いつもぴーぴーいって途中で止まる。
雑巾に負けないぐらいボロボロなんだね。キミは。
僕の家の洗濯機、すっかり使い古されちゃって、
あまりに毎日、回されて、目は回さないけど
最近、上手に動いてくれなくなった。
人間みたいに心がないからって、
まるで馬車馬みたいにこき使っちゃったからだろうけど、
だからってお古すぎるもんだから治す事もできないし、
おニューは高いもんだから
結局、まだお家に置いたままだった。
いつもぴーぴーいってとちゅうでとまる。
いつもぴーぴー。
鳴ってるというより泣いてるみたいだった。
ある日、回ってる洗濯機の中を
覗いてみたら
大きな両目が現れて僕をみつめてきたから、
おもわずびっくりしちゃって尻餅ついちゃった。
いまにも泣きだしそうな視線を向けてきて、
怒ったように洗剤の泡がドバッと溢れかえって波となって覆いかぶさってきた、
その泡に包まれてシャボン玉に変えられた僕はそのまま洗濯機のなかへ、のみこまれて
洗濯物ごと食べられてしまったのだった。
目が覚めてそれが夢だってわかったけど、
もしかして疲れてしまったのかな?って、おもって、
ごめんねっていうしかなかった。
…こういう時って、なんで謝る事しかできないんだろう?