複数自治体が連携して発行する共同地域通貨について
地域通貨は単独の自治体等で発行されることが多いが、地域経済循環システムは単独の自治体にとどまるとは限らない。中心都市と郊外都市などそれぞれの自治体が役割分担を担っているケースも多く、そのような地域経済循環システムを考慮しない地域通貨の利便性は利用者から見て劣後するものと考えられる。利便性が劣後する場合、地域通貨の実質的価値は低下するので利用者はその使用を回避するようになる。従って、流通範囲を拡大させ地域通貨の利便性を高めることは、当該通貨の流通速度を高め、地域経済活性化への寄与を高めるものと考えられる。また、日本は人口減少社会であるため、一部の都市を除く個々の自治体では人口が減少していく可能性が高いが、その場合には利用者の減少に加えて、単独の自治体の信用度によって地域通貨の発行が困難なケースも考えられる。その際にも、複数自治体の連携は有力な選択肢となってくると考える。
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そこで、複数自治体が連携して、地域通貨を発行する場合の方法及びその際に生じる問題や課題について、検討を行った。
検討の結果、複数自治体における共通通貨の発行は利用者のニーズ充足度を高める効果が期待できるものの、各自治体が自由に発行の意思決定をする場合には囚人のジレンマが発生し、結果的に発行地域の地域通貨流通量が漸減していく可能性があることがわかった。従って共通通貨を発行したとしてもそれだけで中長期的な地域経済の成長の十分条件にはならず、情報共有による適切な発行計画が必要であると考えられる。